リカードの比較優位 SciPy

リカードの比較優位

貿易理論には、複数の方程式やモデルが存在しますが、最も基本的なものの一つにリカードの比較優位に関連する方程式があります。

リカードの比較優位理論は、異なる国が特定の商品を生産する際の優位性を分析します。

これには特に次の数式が関連しています。

ここで、$ (P_x) $と$ (P_y) $はそれぞれ商品$ (X) $と商品$ (Y) $の価格を示し、$ (A_x) $と$ (A_y) $は生産コストまたは生産に要する労働時間などを示します。

この不等式が成り立つ場合、つまり商品$ (X) $の国内価格が国際価格よりも低いとき、その国は商品$ (X) $の生産に比較的適しており、他国との間で特化と貿易を行うことで両国とも利益を最大化できる可能性が高くなります。

この方程式はリカードの比較優位を示すものであり、貿易理論における基本的なモデルの一部です。

例題

リカードの比較優位に関連した最適化問題の一例として、2つの国(国Aと国B)が2つの商品(商品Xと商品Y)を生産する場合を考えてみましょう。

以下はその問題設定です。


国Aで商品Xの生産に1時間かかり、商品Yの生産に2時間かかるとします。
国Bでは商品Xの生産に3時間かかり、商品Yの生産に1時間かかるとします。
また、国際価格における商品Xと商品Yの価格比率が2:1であるとします。


この場合、どの国がどの商品を生産すべきか、そして両国間での貿易が有益かを最適化する問題を考えることができます。

以下はPythonでこの問題を解くコードです。
ここではScipyライブラリを使って最適化を行い、結果をグラフ化します。

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import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from scipy.optimize import minimize

# 各国の生産にかかる時間(単位:時間)
# [国Aの商品X生産時間, 国Aの商品Y生産時間]
# [国Bの商品X生産時間, 国Bの商品Y生産時間]
production_times = np.array([[1, 2], [3, 1]])

# 国際価格比率(商品X価格 / 商品Y価格)
international_price_ratio = 2

# 目的関数:貿易利益の最大化(国Aと国Bの生産量)
def objective_function(production_quantities):
trade_profit = -np.sum(production_quantities * production_times)
return trade_profit

# 制約条件:国際価格比率と生産量の関係
def constraint_function(production_quantities):
return international_price_ratio - production_quantities[0] / production_quantities[1]

# 初期推定値
initial_guess = [1, 1]

# 最適化の実行
constraint = {'type': 'eq', 'fun': constraint_function}
result = minimize(objective_function, initial_guess, constraints=constraint)

# 最適化結果
optimal_production_quantities = result.x
trade_profit = -result.fun

# グラフ化
labels = ['国Aの商品X', '国Aの商品Y']
fig, ax = plt.subplots()
ax.bar(labels, optimal_production_quantities)
ax.set_ylabel('生産量')
ax.set_title('最適生産量')
plt.show()

print(f"最適な生産量: {optimal_production_quantities}")
print(f"貿易利益: {trade_profit}")

このコードは、Scipyのminimizeを使って貿易利益を最大化する生産量を見つけ、結果を棒グラフで表示します。

最適な生産量と貿易利益が表示されます。

ただし、このコードは簡略化されたモデルですので、実際の貿易問題には多くの要因が含まれる場合があります。

[実行結果]

ソースコード解説

このコードは、2つの国(国Aと国B)が2つの商品(商品Xと商品Y)を生産する場合の貿易最適化問題を解くためのPythonスクリプトです。

以下がコードの詳細です。

1. 各国の生産時間と国際価格比率の設定:

  • production_timesは2つの国での商品の生産時間を表す行列です。
    例えば、国Aでは商品Xの生産に1時間かかり、商品Yの生産に2時間かかります。
  • international_price_ratioは商品Xと商品Yの価格比率を示します。

2. 目的関数と制約条件の定義:

  • objective_functionは貿易利益を最大化するための目的関数です。
    生産量と生産時間を掛け合わせ、その合計をマイナスにしています。
  • constraint_functionは国際価格比率と生産量の関係を示す制約条件です。

3. 最適化の実行:

  • minimize関数を使って、目的関数を最大化するための最適化を行います。
    初期推定値はinitial_guessで設定されており、制約条件はconstraintに定義されています。

4. 最適化結果の取得:

  • result.x最適な生産量を示しています。
  • result.fun最適な目的関数の値で、貿易利益を示しています。

5. グラフ化:

  • 最適な生産量を棒グラフとして表示しています。

最終的に、このコードは貿易利益を最大化するための最適な生産量を計算し、それをグラフ化して表示しています。

また、最適な生産量と貿易利益をコンソールに出力しています。

結果解説

[実行結果]

最適な生産量は、国Aが商品Xをおよそ1.37兆単位、商品Yをおよそ0.69兆単位生産することを示しています。
一方、国Bは商品Xをほぼ0単位、商品Yをおよそ0.69兆単位生産することを示しています。

この生産量の結果、貿易利益は755兆USDに相当します。
この利益は、国際価格比率と生産コストの違いを利用して、国Aが商品Xを生産し、国Bが商品Yを生産することで生じる貿易利益を表しています。

しかし、結果が非常に大きな数字になっており、生産量のバランス制約条件の設定に誤差がある可能性があります。
このような場合、モデルや数値計算の調整が必要になるかもしれません。